
50代になると、自分自身の健康だけでなく、80・90代の親の介護や健康管理を意識する方が増えてきます。特に見落とされがちなのが“お口のケア”。実はお口の健康は、全身の健康寿命や介護予防に大きく関わっているのです。
今回は、ご家族を介護する方やケアマネージャーに役立つ、高齢者の口腔ケアのポイントを分かりやすくご紹介します。
目次
なぜ高齢者に口腔ケアが必要なのか

高齢者は、加齢に伴い「噛む」「飲み込む」「呼吸する」「話す」「表情を作る」といった口腔機能全般が低下しやすい傾向にあり、このように歯や口の機能が衰えた状態をオーラルフレイルといいます。 口腔ケアの目的は、口の中を清潔にするだけでなく、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持することであり、QOL(生活の質)の向上だけでなく、全身疾患の予防、全身の健康状態の維持・向上にもつながります。
介護現場でよくあるお口のトラブル

口臭がある・乾燥する
加齢とともに唾液の分泌量は減少します。特に高齢者の口腔内は内服薬の副作用でさらに減少し、口腔内の乾燥が進みやすいです。唾液の減少は、お口の中の自浄作用を低下させるとともに、噛む、飲み込む、発声する、などの機能低下にもつながります。
歯周病が増える
唾液による自浄作用の低下により、食べかすを洗い流せずお口の中で細菌が増え、歯を失う原因である歯周病の原因を作ります。さらに、加齢により抵抗力が落ちることで歯周病の進行も早くなります。歯周病は痛みなどの具体的な症状が現れにくく、気付いた頃には重症化していることが多いため注意が必要です。
入れ歯の不具合
入れ歯の不具合で十分に噛めなくなると、食事量が減り低栄養や体重減少を招きます。さらに筋力低下や免疫力の低下につながり、寝たきりや誤嚥性肺炎など介護リスクの増大にも直結します。
口の健康は全身の健康に関わる

加齢に伴う口腔内の変化に加えて、口腔ケアを怠ると口の中の細菌が増加しやすく、口の粘膜の炎症の原因になります。炎症は口から全身に波及し、発熱などを引き起こし、免疫機能や体力の低下を招いたり、血管など他の身体の臓器を障害したりします。特に、口腔内の不衛生な状態による細菌の増殖によって高齢者の方に多い「誤嚥性肺炎」の危険も高まります。全身疾患を防ぐためにも、口腔ケアを徹底して、お口の中の細菌を減らすことが大切です。
口腔ケアの手順

お口の中は適度な温度と湿度が保たれているため、歯や入れ歯の面に付着した細菌を積極的に取り除かないと、それが栄養となり細菌が増えてしまいます。上記の手順で口腔ケアを行なって、お口の中を清潔に保ちましょう。自分で歯を磨いたり、うがいをしたりすることは、身体の機能維持にも効果的です。
うがい

左右の頬をふくらませて、しっかり動かしながらうがいをします。うがいをすることで食べ物の残りかすを取り除くだけでなく、頬や唇の閉じを良くするための運動にもなります。
入れ歯の清掃(入れ歯を使用している場合)

入れ歯を流水下でよく洗い流してください。歯の付け根、入れ歯の縁や裏側、バネの部分などは汚れが停滞しやすいため注意しながらお手入れをしましょう。週に1~2回程度は、歯ブラシで磨いた後、入れ歯洗浄剤を使うことをお勧めします。
歯磨き

歯磨きの目的は、歯の表面に付着している歯垢(プラーク)を取り除くことです。歯ブラシは軽く、優しい力で小刻みに動かします。歯ブラシは柔らかめの毛先で、ヘッドが小さめのを選ぶと、細かい部分まで磨きやすくなります。歯と歯の間に詰まった汚れは、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで効率的に取り除くことができます。
舌の清掃(舌苔を取り除く)

舌苔(ぜったい)とは舌の表面に付着する白い苔状(こけじょう)のものです。薄く舌苔があるのは正常ですが、舌苔が厚くなると菌の温床となり、口臭や誤嚥性肺炎の誘因となる可能性があります。舌ブラシややわらかい歯ブラシなどで、奥から手前に優しく汚れを落としましょう。やりすぎは舌を傷つけるので注意しましょう。
▶︎口腔ケアの仕上げとしてお口の汚れを洗い流すために、最後にもう一度うがいをしましょう。
唾液腺マッサージも口腔ケアの一つ

唾液の分泌を促すために唾液腺を刺激することを「唾液腺マッサージ」と言います。唾液の分泌を促すことで口腔内を潤し、虫歯や歯周疾患、誤嚥性肺炎などのリスクを軽減する効果があります。朝起きた時や食事の前、人と話す前などに行ってみましょう。
- 耳下腺(じかせん)マッサージ:耳たぶの前方、奥歯のあたりに4本の指で、後ろから前へ軽く回すように10回マッサージします。円を描くようにゆっくり揉みます。
- 顎下腺(がっかせん)マッサージ:顎の骨の内側の柔らかい部分に親指を当て、骨に沿って5カ所くらいを順番に1~2秒押します。(2回繰り返す)
- 舌下腺(ぜっかせん)マッサージ:親指をそろえ、顎の真下からゆっくり押します。
家族や介護者がサポートする時のポイント

高齢者自身が口腔ケアを行うのが難しい場合、家族や介護者がサポートすることが重要です。以下のポイントに注意しましょう。
- 声かけを大切にする:ケア中に適切な声かけを行い、不安を軽減しましょう。
- 適切なケア用品を準備:柔らかい歯ブラシや、持ちやすいグリップのケア用品を選びましょう。
- 無理のない範囲で行う:痛みや不快感がないように注意しながら、ゆっくりと丁寧に進めましょう。
※口腔ケアを行うことが難しい場合や介助が必要な場合などは、実施する前に医療機関に相談しましょう。
セルフケアと併せて定期的な歯科検診も大切

口腔ケアを行う場合は、ご自宅でのケアと併せて定期的な歯科検診を受けることも重要です。歯のクリーニングや早期治療を行うことで、健康な口腔環境を維持することができます。年齢を重ねると、歯のエナメル質がすり減ったり、骨や歯茎が痩せたりして、疾患にかかりやすい状態になります。そのため、高齢者の方は、こまめに(1〜2ヶ月に1回程度)歯科検診を受けることをお勧めします。
まとめ
高齢者の口腔ケアは、単なる歯や口の健康を保つためだけでなく、全身の健康を守り、生活の質を向上させるために欠かせないものです。適切なケアを日々続けることで、健康で快適な生活をサポートできます。家族も積極的に関わりながら、口腔ケアを生活の一部として取り入れましょう。
さらに詳しい情報や個別にご相談が必要な方は、岸和田市の堀内歯科にご相談ください。経験豊富なスタッフが丁寧に対応いたします。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史
岸和田のかかりつけ医、この町の歯医者さん堀内歯科
東岸和田駅から徒歩約7分
〒596-0825 岸和田市土生町6丁目10-8
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