小児矯正に欠かせないMFT(口腔筋機能療法)とは?

    MFT(口腔筋機能療法)(Oral Myofunctional Therapy)とは、お口の周りの筋肉と舌を“正しい機能”に改善する機能訓練法のことです。

    MFTを行うことで、姿勢と舌の位置の改善を行い、正しい飲み込み方と、鼻呼吸の癖をつけて、お口周りの筋肉などの機能を正しく導いてあげることで、悪い歯並びを予防します。

    今回は、MFTとご自宅でもできる簡単なトレーニングについてご紹介します。

    歯並びに影響する癖を改善するトレーニング「MFT

    歯並びが乱れる大きな要因は、口周りの悪い癖や生活習慣が挙げられます。お口の外側には唇や頬、内側には舌があります。そのため、いつも唇が開いていたり、舌が口からはみだしていたりすると、筋肉の圧力により歯が望ましくない方向に移動し、歯並びが悪くなります。MFTを行うことで、正しい舌の動きや正しい口のまわりの筋肉の動きを覚えていき習慣化し、正しい機能に改善していきます。

    矯正治療の後戻りを防ぐ効果もある

    歯の矯正治療を行っても、筋肉からの圧力がそのままの状態だと、歯が元の位置に戻ってしまいます。そのため、矯正装置での治療と並行してMFTトレーニングを行うこともよくあります。MFTを行うことで矯正治療をスムーズに進めることができます。

    MFTの3つの訓練内容

    MFT(口腔筋機能療法)の対象年齢は、一般的に5〜10歳程度とされています。年齢が若いほど効果が出やすいですが、大人の方でも口腔環境を正常な状態へ整えていくことは可能です。

    MFTの訓練内容には、以下の3つの要素があります。

    1.個々の筋肉の訓練

    舌、唇、咀嚼筋など、それぞれの筋肉の機能改善を行います。その時に筋肉の力を強めるだけでなく、緊張しすぎている筋肉をリラックスさせ、全体的にバランスのとれた状態を目指します。

    2.咀嚼・嚥下・発音・呼吸の訓練

    これらの動作をする際、口腔周囲筋(唇・ほほ・あご・舌などの口の周りの筋肉のこと)がかける筋圧を適正化し、正しく動作ができるようにします。それと同時に、歯並びの悪化を防ぎます。

    3.舌と唇の正しい姿勢の訓練

    リラックスしたときに「舌と唇がいつも正しい位置にある」ことを目指します。「正しい位置」とは「筋肉が歯並びに悪影響を与えない位置」です。舌と唇が正しい位置にあるかどうかは、特に歯並びに大きな影響を与えるとされています。

    舌や唇の安静時のお口の正しい姿勢とは?

    口にも身体と同じように正しい姿勢があります。鼻呼吸をしていること、上下の歯がわずかに離れていることも、お口の正しい姿勢の状態です。舌や唇の正しい姿勢は以下の通りです。

    【舌】は、舌先がスポット(上の前歯の裏側からほんの少し後ろにある歯ぐきの膨らみ)にあり、舌全体が上顎に密着して上がっているのが正しい状態です。舌が下がっている「低位舌」は常に歯に舌を押し付けている状態で、出っ歯や受け口につながります。

    【唇】は軽く閉じているのが正しい状態です。少しでも開いているのはいわゆる「ポカン口」と呼ばれる状態で、唇が緩んで開いていると、唇からの力が前歯にかからず、出っ歯になることがあります。

    舌と唇が正しい姿勢でないと様々なお口のトラブルにつながる

    唇と舌の位置が正しくない場合、咀嚼・嚥下・発音のいずれかに問題があることが多いといわれています。その結果、歯並びが悪くなるだけでなく、様々なお口のトラブルにもつながります。

    • 歯並びが悪くなる
    • 口呼吸になる
    • 発音や滑舌が悪くなる
    • いびきの原因になる
    • 歯周病になるリスクが高まる
    • 口臭がきつくなる・・・など

    MFTトレーニングの紹介

    MFT(口腔筋機能療法)の代表的なトレーニングをいくつかご紹介します。これら以外にもさまざまなトレーニングがあり、お口の状態に応じてプログラムを作成します。

    ◆ポッピング

    ポッピングは、⾆を持ち上げる⼒をつけるトレーニングです。舌全体を口蓋にくっつける力と感覚を身につけるとともに舌小帯(舌の裏の筋)を伸ばします。

    1. 舌尖をスポットにつけ、舌全体を口蓋に吸い上げる。
    2. 口を大きく開け、舌小帯をできるだけ伸ばす。
    3. 舌で口蓋をはじくようにし、ポンと音を立てる。10~15回繰り返す。

    ◆スポットポジション

    安静時の正しい舌の場所を覚えるためのトレーニングです。

    スティックでスポットに触れる(5秒)

    1. スティックを離して、触れられていた場所に舌先をつける。※舌の先を丸めないで、舌の脇を締め、先を尖らせて行う(5秒)
    2. 1と2を交互に5回繰り返す。舌先は上下の前歯に触れないようにしましょう。

    鏡で確認しながら正確な位置を覚えて練習するのがおすすめです。舌の先が丸まってしまいがちな方は出来るだけ口を大きく開けて練習するようにしましょう。

    自宅で簡単にできるトレーニング方法「うがい」

    お家で簡単にできるトレーニングは「うがい」です。唇をしっかり閉じて、周りに音が聞こえるぐらい強くブクブクうがいをすることで唇や舌の筋力強化につながります。帰宅時や歯磨きのときなどに取り入れてみましょう。慣れてきたら「ガーグルストップ(ガラガラうがい)」にもチャレンジしてみましょう。

    ガーグルストップ(ガラガラうがい)の仕方

    口を上に向けて大きく開けた状態でガラガラうがいを行ない、途中で止めます。3秒間ガラガラうがい、5秒止めることを5回行ないます。最初は少ない水の量で行い、慣れてきたら水の量を増やしてやってみましょう。

    まとめ

    MFT(口腔筋機能療法)は、正しい舌の動きや口の周りの筋肉の動きを正しく機能させるトレーニングのことです。口にも身体と同じように正しい姿勢があります。舌やお口周りの筋肉のトレーニングを行い、正しい舌の使い方、動き、位置を維持できるようにしましょう。

    MFTは、歯科医院で受けられますが、自宅でも簡単に行えます。日々の習慣にしていくことで自然と舌が正しい位置に誘動されるようになります。歯並びが気になる方もそうでない方も、ぜひ毎日の習慣として取り入れてみてください。

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    記事監修 Dr.堀内 啓史
    堀内歯科医院
    院長 堀内 啓史