歯磨き粉(歯磨剤)によってフッ素濃度が違う!?

    市販されている歯磨き粉や歯医者さんで販売されている歯磨き粉には、フッ素配合の歯磨き粉があり、「虫歯に良い」とか「お子様の歯を守る」といった謳い文句で、販売されていると思います。しかし、フッ素が入っているからどれを使用しても良いという訳ではないんです。
    特にお子様の場合は、年齢により摂取できる適切なフッ素の量があり、お子様に使用する歯磨き粉は、年齢に適したフッ素濃度のものを使用される事をオススメします。

    フッ素濃度の見方

    フッ素濃度は『ppmF』で表示されることが多く『ppm』(ピーピーエム)は100万分の1を表す単位です。1500ppmFは、1g中にフッ素が1.5mg入っているということになります。フッ素配合の歯磨き剤を購入する場合は、商品のパッケージの表面または裏面に「〇〇〇ppmF」や「〇〇〇ppm」というように表記されているかをチェックしてみてください。もし、フッ素濃度が表記されていない歯磨き粉でも1000ppmFを超える高濃度のフッ素配合の歯磨き粉には必ず「6歳未満の子供の使用は控え、子供の手の届かない所に保管してください」という注意書きがあります。適切なフッ素濃度を守るためにきちんとフッ素濃度の表記のある歯磨き剤を選ぶことをおすすめします。

    年齢ごとの最適摂取フッ素濃度と歯磨き粉の量

    2023 年 1 月、日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4つの学会で「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」というものがまとめられました。

    ▷▶︎▷こちらからご覧いただけます。(日本口腔衛生学会HPより引用)

    【大きな変更点】

    ・0〜5歳までに推奨されるフッ素濃度が、500ppmから1,000ppmに変更。
    ・6〜14歳の枠が廃止され、6歳以上であれば1,500ppmのフッ素濃度を推奨。

    今まで日本は、他国に比べてフッ素濃度の限度が低い水準でしたが、国際的に推奨されている水準とは乖離している部分が多くみられるため、日本の状況を考慮した上で今回の推奨がまとめられました。今回の発表では「歯が生えてから2歳」「3~5歳」「6歳~成人・高齢者」と3つに区分をし、フッ化物配合歯磨剤使用量の目安が提示されています。今回は、そちらの内容を踏まえて、年齢ごとの最適フッ素濃度と歯磨き粉の量やおすすめの歯磨き粉についてご紹介します。

    歯が生えてから2歳

    • 【推奨フッ素濃度】1,000ppmF(日本の製品を踏まえて900〜1,000ppmF)
    • 【歯磨き粉の量】米粒程度のごく少量(1〜2㎜)
    • 【ポイント】うがいが難しければ歯磨きの後にティッシュなどで歯磨剤を軽く拭き取ってもOKです。誤飲を防ぐために歯磨き粉は、子どもの手が届かない所に保管するように注意しましょう。

    おすすめの歯磨き剤:チェックアップジェル

    チェックアップジェルは、フッ素が口腔内のすみずみまで広がりやすいソフトジェルで研磨剤無配合が特徴です。フッ素濃度が950ppmF配合されています。ジェルタイプは歯や歯茎に優しく、歯の表面や歯間に付着しやすいので薬効成分が届きやすいため、特に洗口が難しい小さいお子様にオススメです。ピーチ・グレープ・レモンティーの3種類の味があります。

    3〜5 歳

     

    • 【推奨フッ素濃度】1,000ppmF(日本の製品を踏まえて900〜1,000ppmF)
    • 【歯磨き粉の量】グリーンピース程度(5㎜程度)
    • 【ポイント】歯磨きの後は、歯磨き粉を軽く吐き出して、うがいをする場合は少量の水で1回のみでOKです。お子さまが歯磨き粉の量を適切な量をつけられない場合は、保護者の方が出してあげましょう。

    おすすめの歯磨き粉:チェックアップコドモ

    チェックアップコドモは低研磨・低発砲・低香味でフッ素が口腔内のすみずみまで広がりやすいソフトペーストで子供用の歯みがき粉としては高い950ppmFのフッ素を配合しているのが特徴です。低発砲により泡立ちが多いことで磨けたという錯覚による磨き残しを防くことができます。余分な研磨剤が入っていないので「永久歯」に比べて外部からの刺激に弱い「乳歯」が傷つくのを防ぎます。

    おすすめの歯磨きジェル:ホームジェル

    主成分としてフッ化物の一つである「フッ化第一スズ」が入っており、強い殺菌作用があり、虫歯や歯周病の原因となる菌を減らしてくれます。フッ化ナトリウムよりも虫歯予防効果が高いといわれているので虫歯になりやすいという方におススメです。しかし、スズイオンの作用で歯が茶色く着色することがあります。(歯のクリーニングで除去することが可能です)

    ※金属アレルギーのある方は、成分中のスズイオンと反応してアレルギー症状が出る事があるため使用には注意が必要です。

    6歳〜 成人・ 高齢者

    • 【推奨フッ素濃度】 1,500ppmF(日本の製品を踏まえて1,400〜1,500ppmF)
    • 【歯磨き粉の量】歯ブラシ全体(1.5㎝〜2㎝程度)
    • 【使用方法】歯磨きの後は、歯磨き粉を軽く吐き出して、うがいをする場合は少量の水で1回のみでOKです。チタン製のつめ物や被せ物をしていても歯がある場合は、フッ化物配合の歯磨剤(歯磨き粉やジェル)を使用しましょう。

    おすすめの歯磨き粉:チェックアップスタンダード

    チェックアップスタンダードは低研磨・低発泡・低香味で、お口にやさしいオーラルケアができます。口の中が辛くなることなく、気になる箇所をじっくり磨けるため長時間のブラッシングにも最適です。フッ素濃度1450ppmFの高濃度配合で「ピュアミント」と「シトラスミント」の2種類があります。

    おすすめの歯磨きジェル:チェックアップルートケア・ミント

    6才以上のジェルタイプの歯磨き粉のおすすめは、チェックアップスタンダートと同様の1450ppmF配合のチェックアップジェルです。高濃度のフッ素が配合されているチェックアップジェルには「ルートケア」と「ジェルミント」があります。

    「ルートケア」は歯茎が下がってきた部分を保護する成分が入っており、研磨剤も入っていないため、歯茎が下がって歯の根が見えてきた方や知覚過敏のある方に特にオススメの歯磨き粉です。 

    「ジェルミント」は、薬用成分としてフッ化ナトリウムの他にCPC(塩化セチルピリジニウム)も配合しています。バイオフィルム(歯垢などの微生物の集合体)表面を殺菌して、虫歯だけでなく歯周病を防ぐ効果があります。

    大人の歯磨き粉に変えるタイミングとは?

    年齢別におすすめの歯磨き粉をご紹介しましたが、大人の歯磨き粉への移行は、お子さまが磨きたいというタイミングで良いと思います。大人の歯磨き粉を使用の際は、フッ素濃度の割合を確認した上で適切にご使用ください。6才未満のお子様には1,450ppmFの歯磨き粉は使用しないように注意しましょう。

    歯磨き粉を選ぶ時は低研磨や研磨剤無添加を選びましょう

    歯科医院で販売されている歯磨き粉は、低研磨、研磨剤無添加のものがほとんどです。その理由はご自宅での歯磨き・ブラッシングは、歯医者さんでしっかりクリーニングされた歯を綺麗な状態で保つためにあるものだからです。しかし、市販されている大人の歯磨き粉には、ステインや着色を除去する効果のある研磨剤が含まれているものが多いです。研磨剤が多く配合されているものを使い続けると少しずつ歯の表面のエナメル質が削られ細かい傷がついていき、歯に着色や汚れなどがつきやすくなります。着色汚れや歯の汚れが気になるからといって研磨剤入りの歯磨き粉でゴシゴシ磨いて汚れを落とすよりも、歯科医院でプロの手によって綺麗にしてもらう方が歯を傷つけずに綺麗な状態を保つことができます。

    まとめ

    虫歯予防に効果があると言われる「フッ素」ですが、2023 年 1 月、日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会4つの学会で「4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」というものがまとめられました。それに伴い年齢によって推奨されるフッ素濃度が変更になりました。適切な量を守り正しく虫歯予防していきましょう。

    虫歯と聞くと子供のイメージがありますが実は、大人になると、不規則な生活や、歯科治療などにより2次むし歯(治療済の歯が再度むし歯になる)になりやすく、むし歯リスクが上昇することがあります。フッ素は子供も大人も関係なく歯を守る大切な方法のひとつです。毎日の歯磨きにフッ素配合の歯磨き剤を取り入れていきましょう。

    記事監修 Dr.堀内 啓史
    堀内歯科医院
    院長 堀内 啓史